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ジャンル別イノベーターの時代No.7

女子高生のSNS事情と、インフルエンサー選びの指標とは?

2019/05/31

電通ギャルラボでは、特定ジャンルにオタク的な深い知識を持ち、その分野において市場を動かす鍵を握っている影響力の高い人のことを「ジャンル別イノベーター」と定義しています。彼らを活用したマーケティングを探る連載最終回では、女子高生のリアルな声を紹介。マイナビティーンズ※事業推進室の岩渕俊明さんとともに、電通ギャルラボの阿佐見綾香が、彼女らの情報源であるインフルエンサーに内在するジャンル別イノベーター的要素を探り、最後に連載全体を総括します。

※マイナビティーンズ:ティーン女子をターゲットとしたクロスメディア「マイナビティーンズonline」、ティーン限定のインフルエンサープラットフォーム「SPIRIT TEENS(スピリットティーンズ)」、ティーン向けプロモーションスペース「JOL原宿」、ティーンのマーケティング・リサーチデータを企業に提供する「マイナビティーンズラボ」など、あらゆるリソースを活用しながら企業のティーン向けマーケティング・プロモーションを支援している。

<目次>
Ⅰ-1 今どき女子高生が、フォローしたくなる情報発信者とは?
▼マイナビティーンズ女子高生の最近のSNS事情
▼女子高生のSNS事情三つの特徴
I-2 インフルエンサーを選ぶ指標は エンゲージメント+親和性
▼インフルエンサーを選ぶ指標はエンゲージメント率+親和性
▼クラスのコミュニティーリーダーに情報を投げるボトムアップ型PRも展開
KEY POINT        
Ⅱ 「ジャンル別イノベーターの時代」連載のまとめ      

マイナビティーンズ女子高生の最近のSNS事情

マイナビティーンズの会員である女子高生二人。彼女たち自身のSNS事情のリアルな声を、まず紹介します。

■Aさん(高校2年生)──インスタフォロワー1700人。カフェ情報を発信中

今ハマっているのは、Instagram。芸能人やカップルインスタグラマーの画像を見るだけでなく、自分でもカフェの画像を投稿して1700人近くのフォロワーがいます。「#地名+カフェ」のタグをつけて画像を投稿したらフォロワーが増えていきました。自分がカフェを探す時も、同じように「#地名+カフェ」で検索します。

反応がいいのは、「#表参道カフェ」で投稿した写真。上手に撮れた写真、おいしそうな写真は「お気に入り」される数が急激に増えます。友達とサラダのお店に行き、3人分のお皿をきれいに並べてインスタに投稿したら400人以上に「お気に入り」されました。「いいね」じゃなくて「お気に入り」されるってことは、後日その人もそのお店に行くつもりなんでしょうね。

フォロワー数は、2000人ぐらいで十分。1万人を超えると将来就職する時にアカウントが見つかる確率が高くなるのが嫌なので、1万人を超えたくはないですね。

カフェアカウントの他、友達のサブアカウントをフォローするためのインスタアカウントを持っています。こちらはフォロワー数20前後。鍵をかけ、「ストーリーズ」を中心に身の回りのことを投稿しています。

■Bさん(高校2年生)──世界観が統一されたインスタが好き。でも、頑張り過ぎはNG!

画像加工に凝っていた頃は、韓国のインスタで良く見られる彩度が低くて黒っぽく画像を加工したものを、インスタに投稿していたんです。ハッシュタグにハングルを使ったり、韓国で流行っているタグをつけたりしたら、コアな韓国好きのフォロワーが一気に増えました。でも、リアアカ(友人・知人用のアカウント)と韓国アカを一緒にしていたので、世界観を崩さないようにするのが大変。2000人以上のフォロワーがいましたが、疲れてしまったのでアカウントを丸ごと削除しました。今は検索して閲覧する用のアカウントをひとつ持っているだけです。

インスタでフォローしたくなるのは、タピオカだけ、コスメだけと投稿に統一感があるアカウント。インスタの「おすすめ」で気になる写真を見つけたら、アカウントをチェックしてフォローするか決めます。加工も重要ですね。同じアカウントなのに、韓国系、ふわふわ系、ナチュラル系と系統がバラバラだとフォローしないかも。美容院も、インスタに写真を載せていないところはパスします。

インスタは毎日のように投稿しないとフォロワーが減りますが、投稿が多過ぎてもフォローを外されます。頑張り過ぎのアカウントも「ダサいな」って思いますね。アカウントを相互に宣伝し合う交換宣伝で必死にフォロワーを増やしたり、洋服アカウントなのに自撮りばかり載せるようになったりすると「痛いな」って。「自然体でおしゃれ」なのが理想です。

女子高生のSNS事情三つの特徴

女子高生二人へのインタビューから女子高生のSNS事情の特徴が見えてきました。

①趣味アカ、リアアカ、ROMアカを使い分ける

自分の好きなジャンルの情報で世界観をつくり込む“趣味アカ”、身の回りのことを気軽に投稿する“リアアカ”の二つを使い分ける人、さらに投稿を読むだけ・情報を得るだけのROMアカの3アカウントを持っている人が多数派。フォロー数とフォロワー数がほぼ同じという女子高生が多い中、徹底的な画像加工と世界観のつくり込みで、フォロワー数が4桁を超える女子高生も一定数存在(マイナビティーンズではマイクロインフルエンサーと一般女子高生の割合は3:7程度)。

②情報収集はインスタとYouTubeが中心で、パーソナライズ情報が当たり前

コスメやグルメ、ファッションなどの情報源は、インスタ、YouTubeが中心。中でもよく見るのは、インスタの「おすすめ」。かつては必要な情報を自分から検索する時代でしたが、今どきの女子高生にとっては過去の閲覧履歴によりパーソナライズされた「おすすめ」の情報・コンテンツが自動的に“来る”のが当たり前の時代。その恩恵をすごく受けている世代なのです。

③インスタでフォローしたくなるアカウントの五つのポイント

インスタでフォローしたくなるアカウントの条件は、以下の5点。
・世界観が統一されている
・加工がキレイ
・頑張り過ぎず、自然体
・途中から投稿する内容が変わらずブレない
・投稿頻度が適切

ポイントはただ世界観がつくり込まれているというだけではなく、自然体でうそがないこと。頑張り過ぎてあざといものや、本当じゃないことには拒絶感を感じます。世界観の統一や内容がブレないことなどは、この連載のテーマである「ジャンル別イノベーター」に も通じる要素ですね。

インフルエンサーを選ぶ指標はエンゲージメント率+親和性

「マイナビティーンズ」では、さまざまなジャンルのインフルエンサーをアサインし、PR施策を実施しています。

施策のターゲットである女子高生はうそを嫌い、情報の信用性をシビアにチェックします。「#PR」とついた投稿は広告であることも、一定数の子たちは理解しています。とはいえ、PR投稿だからといって信用しないわけではありません。「これはPRです」と明言し、その上で信頼できるインフルエンサーが「2週間使い、良いと思ったところをお伝えします」と紹介すれば、納得してくれます。PRだと隠さないこと、最低でも2、3週間は商材を使用することで、信用性の高い情報として受け入れてくれるのです。

PRに起用するインフルエンサーを選ぶ際、かつてはSNSのフォロワー数を重視していました。しかし、Twitterからインスタへと女子高生の興味が移り始めた約4年前から、エンゲージメント率※がインフルエンサーを選ぶ指標に。Twitterはフォロワー数が多ければリーチし拡散もしますが、インスタは拡散しない分、エンゲージメント率を上げないと情報が伝わらないからです。

加えて徐々にインフルエンサーの信用度が取りざたされるようになってきて、今は、エンゲージメント+親和性の時代を迎えています。日頃からフォロワーとのコミュニケーションを深めているインフルエンサーを起用しても、PR投稿をした時にエンゲージメント率がグッと下がるようでは意味がありません。そのため、商材と親和性のあるインフルエンサーをキャスティングすることが重要なのです。

われわれがインフルエンサーをキャスティングする際も、商材がその人に適しているか、つまりその分野に深い知識を持つ「ジャンル別イノベーター」であるか、インスタやYouTubeの過去の投稿を通じてチェックします。ポイントはインフルエンサーが、インスタやYouTubeを通じて打ち出している“世界観”です。

先ほどの二人の女子高生を見ても分かるように、世界観はつくり込むものなのです。だから、投稿されたものを見れば、どんなテイストか、普段どんなことをしているのかが分かります。つまり、インスタやYouTubeはその人の“取扱説明書”のようなもの。プランナーには、こうした取扱説明書を読み解くスキルが求められるのです。

その点でいえば、YouTubeの方がジャンルや、やってることは分かりやすいと思います。インスタは“おしゃれなことをしていることが正義”というところがあるので、例えばカフェとコスメはジャンルが違うけれど、おしゃれだからと一緒にされてしまいます。YouTubeだとコスメ系の場合、例えば旅行に行ったとしてもご当地の化粧品を探してきて動画で見せたりするので分かりやすいです。本人のキャラクターもYouTubeの方が分かりやすいですね。普段ふざけてる子が急に真面目なことをやってもおかしいので、徹底的にふざける、といったように。

友達同士での来場促進を目的としたキャンペーンで、中学の同級生で構成された身内での遊びやネタ動画を発信しているユーチューバーを起用し、彼らの企画のシリーズに類似したPR動画を作成し、うまくいったという事例もあります。商材とインフルエンサーの親和性が高いことがポイントです。

※エンゲージメント率:フォロワーから「いいね!」やコメントなどの積極的な反応を示してもらえる割合

クラスのコミュニティーリーダーに情報を投げるボトムアップ型PRも展開

人気ユーチューバーやインスタグラマーではなく、クラスのコミュニティーリーダーに情報を投下するケースもあります。コミュニティーリーダーは、クラスの“一軍”。かつては運動ができる子、かわいい子などが一軍を占めていましたが、今はSNSで顔出しするかわいい子だけではなく、SNSでの自己表現が上手い子、SNSだとイケメンに見える子などいろいろなタイプがいます。フォロワー数の多寡を問わず、SNSを上手に使いこなしている子が増えています。

SNSを使いこなせる人気者は、自己表現が上手で、人に影響を及ぼす力、発信力を持っています。以前なら、芸能事務所に所属するインフルエンサーにしかアプローチできませんでしたが、今ではこうした高校生にもアクセスできます。

これまでのPR活動は、タレントやモデルなどの事務所に所属するパワーインフルエンサーに落とした情報を、コミュニティーリーダーがクラスに広めるという、上から下へのシャワー効果を狙っていました。

今のティーン女子は、友達からの情報を信用しやすいため、クラスのコミュニティーリーダーに情報を投下するボトムアップ型PRによって、口コミ効果を狙います。「コミュニティーリーダーから聞いたコスメを検索したら、パワーインフルエンサーもおすすめしていた。やっぱりこれは信頼できる商品なんだ」という流れをつくります。

学校など自分たちのコミュニティーにおけるインフルエンサーと、その領域で著名なジャンル別イノベーターの両方からの情報によりPR効果も高まるのです。

小学生の頃からSNSでのコミュニケーションやネットでの情報収集に当たり前に慣れ親しんできた女子高生たちは、目的に合わせて情報を集めたり編集したりするスキルが高くなっています。時代の最先端といえる彼女たちに向き合い続けるマイナビティーンズ岩渕さんの話からは、ジャンル別イノベーターの時代のマーケティングを読み解く重要な視点が多くありました。

押さえておきたいポイントは、次の3点です。

①コミュニケーションの軸が「言葉」から「画像の世界観」へ

女子高生たちは欲しい情報を「画像」や「映像」で獲得します。キーワードで直接的に検索して情報を探すのではなく、好きな世界観の画像をフォローして集めることでレコメンドされてくる情報の精度を上げたり、自らのSNS発信でも世界観をつくり上げて共感し合える人が集まってくるようにするなど、好きな画像や、そこから世界観を見つけ出すスキルが高くなってきているのです。TwitterからInstagramにトレンドが移り変わったときに、言葉よりも画像の時代へとパラダイムシフトが起こりました。

インターネット上の情報を収集して編集し、価値を持たせてシェアすることを「キュレーション」といいますが、元々は美術館や博物館で企画展を組織すること。テーマと世界観の勝負という点で、今は本来の意味の「キュレーション」が価値を持つ時代になってきているといえるでしょう。

②情報源は、パーソナライズ&レコメンドされた「1次情報」

女子高生たちは、SNSで人々が発信する「1次情報」を重視します。1次情報は、発信者本人が実際に見聞きしたり体験して手に入れた情報のこと。個人の発信すらも、パーソナライズされた「おすすめ」の情報として自動的に“来る”のが当たり前の今、自らの1次情報を価値あるコンテンツとして発信できる、表現力のあるジャンル別イノベーターが彼女たちに重宝される情報源となっています。

③情報発信にいっそう求められる「表現力」

女子高生たちは情報を集めるだけではなく、発信者としてのスキルも持ちます。どんな情報が見てもらえるのかを研究し、トライ&エラーを繰り返し、自らの「好き」に関連する情報をコンテンツ化して表現することができます。これからはそんな目の肥えた消費者が上の年代に上がってくるということです。この先に生き残るためには、言葉にする力、説明する力、世界観をつくる力などあらゆる表現力がキーになっていきます。

左から電通ギャルラボの阿佐見綾香さん、マイナビティーンズの岩渕俊明さん

「ジャンル別イノベーターの時代」全7回の連載は今回で最終回となりましたが、いかがだったでしょうか。

これまでの連載のポイントを簡単にご紹介します。

第1回:電通ギャルラボの「#女子タグ」マーケティングとは?

特定ジャンルにオタク的な深い知識を持ち、その分野において市場を動かす鍵を握っている影響力の高い人を「ジャンル別イノベーター」と定義。

第2回:消費のカギを握る「ジャンル別イノベーター」

ジャンル別イノベーターは、フォロワー数が多く影響力の範囲が広いインフルエンサーの中にも、フォロワー数が少ない一般の人たちの中にも、どちらにも一定数存在している。企業が効率的に市場の消費を動かすためには、影響力の大きいジャンル別イノベーターの力を借りることが有効。

第3回:土井英司さんに聞く、影響力のある“ジャンル別イノベーター”はどう生まれる?

話を伺ったのは、「ビジネス書」ジャンルのイノベーターとして影響力を持ち、ジャンル別イノーベーターのプロデュースも手掛ける土井英司さん。

影響力のあるジャンル別イノベーターを生み出すためには、「独自ポジションをつくること」と「伝える技術を磨くこと」が重要。マーケター側が重視すべきはジャンル別イノベーターの共感ポイントや思想を把握し、彼らの信念に反さない情報発信を提案すること。

第4回:メークにもっと自由を。常識を変え、市場を創り出したジェンダーレス男子。

話を伺ったのは、男女の境なくメークやファッションを自由に楽しむ“ジェンダーレス男子”という新ジャンルを確立したこんどうようぢさんと、ブームの仕掛け人であるプロデューサーの丸本貴司さん。

ジャンル別イノベーターの発信する新たな価値観は、マイノリティーがマジョリティーに変わるとき新たな市場をも生み出すパワーを持つ。

第5回:複数ジャンルで消費を動かすインフルエンサーの秘密に迫る

話を伺ったのは、複数ジャンルで消費を動かすインフルエンサーの佐藤ノアさん。

インフルエンサーが影響力を持つためには「時間」「ストーリー」「信頼関係」を意識して人間性に対する「ファン」をつくること、さらに独自のPR投稿へのルールをつくることによって、発信する情報への信頼度を高めることが重要。

第6回:「コト消費」の時代に生まれた新ジャンル「プロトラベラー」とは 

話を伺ったのは、「プロトラベラー」の羽石杏奈さんと、雑誌GENIC編集長の藤井利佳さん。

特定ジャンルの情報をキュレーションすることでジャンル別イノベーターとして消費を動かす力を得ていく。またキュレーションされた的確な情報が集まってくる場所をつくると人気が出る。

最終回の第7回では、時代の最先端といえる女子高生のSNS事情から時代を読み解きました。

ジャンル別イノベーターはそれぞれ非常にユニークでエネルギーを持った存在で、そのパワーの活用で社会や経済がより活性化する可能性を秘めています。電通ギャルラボはこれからも、ジャンル別イノベーターの時代に向けて、さまざまな施策やアイデアなどのソリューションの提供を続けていきます。またどこかでお会いできますことを楽しみにしています。