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「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2021」レポートNo.3

これからのブランド開発に欠かせない、顧客体験設計

2022/02/17

電通による“人”基点のマーケティング「People Driven Marketing(※)」(ピープル・ドリブン・マーケティング)。

毎年アップデートを重ね、現在は「PDM5.0」に進化しています。

本連載では、電通人と企業のゲストたちが、マーケティングとデータの未来を語った「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2021」3日間(2021年10月13~15日)の模様を、ダイジェストでレポートします。

2日目のテーマは「CX企画開発実践」(キーノートセッションはこちら)。今回は、D2C(Direct to Consumer)やソーシャルコマース、アドバンステックにおける顧客体験設計の事例を中心に3セッションを紹介します。

※所属や役職はウェビナー当時の情報です。
<目次>
「イミ」消費の時代を生き抜く、パーパスドリブンなブランド開発
ソーシャルコマースで実現する、One to Oneのコミュニケーション
新しいテクノロジーを活用した、次世代CXの最適解とは?
※People Driven Marketing
https://www.dentsudigital.co.jp/service/pdm/summary/
電通が提唱する、データ&デジタル時代に対応した“人”基点の統合マーケティング・フレームワーク。課題を人(People)基点で捉え直し、電通グループが持つ最先端のマーケティング手法を統合して、顧客の持続的な成長を支援していく。

「イミ」消費の時代を生き抜く、パーパスドリブンなブランド開発

久志尚太郎氏、白鳥秋子氏、高橋和希氏

「D2C実践レポート パーパスドリブンなブランド構築における、超えるべき2つの壁」と題したセッションでは、ウェブメディア「TABI LABO」を運営し自社D2C(Direct to Consumer)事業を展開するNEW STANDARDの久志尚太郎氏と白鳥秋子氏、電通デジタル の高橋和希氏が登壇。パーパスが意思決定を左右する時代に必要な顧客体験(CX)を実現するブランド構築の方法を紹介しました。

NEW STANDARD代表取締役の久志氏は、生活者の消費行動が「モノ」消費から「コト」消費へと変化し、さらに今は「イミ」消費の時代に突入したことを指摘。「プロダクトやサービスの“イミ”、すなわちパーパスに共感できるかどうかがユーザーの意思決定に大きな影響を与えます。あらゆるブランドにとって、ユーザーとの対話を通じて自社だからこそ実現すべき“新しいイミ・価値”を磨き、顧客体験をつくっていくことが求められます」と述べました。

イミ消費時代

こうした背景から、近年注目を集めているのが「D2C」です。D2Cは自社で企画・製造したプロダクトを、自社の販売チャネルを用いて直接ユーザーに販売するビジネスモデルを指します。同時にここでは、ユーザーを起点としたプロダクトの開発や顧客体験の設計を行い、初期段階よりデジタルコミュニケーションを主としながらファンと共にプロダクトやブランドを成長させていきます。またその点において、単なるビジネスモデルの枠を超えた「イミ」消費時代にふさわしいマーケティングトレンドとして捉えることができます。

高橋氏はD2C事業の成功に欠かせない視点として、「ユーザー対話型プロトタイピング」を挙げます。これは、ブランドの企画・設計、構築・ローンチ、成長の各段階でユーザーの声やインサイトを反映しながら顧客体験をアップデートしていく手法。「ユーザー対話型のプロトタイピングを通じて、チームで共通のユーザー目線を持ち続けることで、一貫性のある顧客体験を創出することができます」、と高橋氏はこの手法のメリットを説きました。

続いて白鳥氏は、「旧来の価値観でユーザーインタビューを実施しても、なかなか本質的なインサイトを見つけることはできません。そこで、“イミ”消費時代の価値観をけん引するミレニアル世代/Z世代の反応や行動、インサイトを収集・活用することがD2Cブランド構築の手がかりになります」と話しました。

また、旧来型のブランド戦略では、製造やマーケティング、マネタイズ/販売などの各ファンクションが個別に戦略を立てているケースが多く、一貫した顧客体験を提供できないという課題があります。その解決の一手として、「パーパスドリブンなブランドアイデンティティを中核に、各ファンクションが一気通貫した戦略のもと、お互いに連携しながら顧客体験を設計・開発していくことが重要です」と久志氏。

ブランドのDX化における企業構造の課題

こうした課題を解決すべく、電通デジタルとNEW STANDARDが立ち上げたサービスが「BRAND DIGITAL TRANSFORMATION」(BDX)です。BDXでは、ミレニアル世代/Z世代のインサイトを捉えたパーパスドリブンな顧客体験を体現する新規ブランド立ち上げ・既存ブランド再創造を、ワンストップで提供。NEW STANDARDが培ってきたミレニアル世代/Z世代の研究手法と豊富なデータ、電通グループが培ってきた生活者インサイトやコミュニケーション領域の資産を掛け合わせ、ユーザー起点のブランドアイデンティティ策定から顧客設計、プロダクト開発、マーケティング、グロースまでを一気通貫で支援します。

D2CのためのBDX

「従来のブランドにおける2つの壁、“時代に沿った、ブランドのイミの再定義ができていない”“商品だけに目がいきがちで、品性を高める体験に落とし込めていない”を乗り越え、イミ消費時代に合ったモノづくりを支援していきます」と高橋氏は決意を語り、締めくくりました。

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スタートアップ×電通が挑戦する新たな価値創造

ソーシャルコマースで実現する、One to Oneのコミュニケーション

小川浩平氏、植田みさ氏、三橋良平氏

続いて紹介するセッションは、「ソーシャルコマースが実現する新しい顧客体験と、DX推進 ~大黒屋の売り場拡張変革~」。大黒屋ホールディングス代表取締役社長の小川浩平氏、電通の植田みさ氏、電通デジタルの三橋良平氏、が、企業と顧客が直接つながれる時代のコマース視点の売り場変革について、大黒屋と電通の取り組みをもとに紹介しました。

大黒屋は、ブランド品の買い取り・販売業を展開するリユース業界のリーディングカンパニー。創業70年の歴史を通して培ってきた鑑定力と買い取り実績を強みとする一方、若年層を中心とした新規顧客の獲得やコロナ禍でのインバウンド低迷といった課題を抱えていました。

そこで同社は、「認知拡大・ブランディング」と「顧客接点・売り場強化」の2つの軸で改革を推進。前者ではロゴ改定やテレビCM制作を行い、後者ではオンライン買い取りサービスのローンチやECサイトのUI/UX改善、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)改善などに取り組んできました。こうした改革の中で特に注目したいのが、ソーシャルコマースの強化です。

小川氏はソーシャルコマース強化の理由について、「私たちが取り扱う品物は、ブランドや商品カテゴリーごとにお客さまのニーズが大きく異なります。お客さま一人一人に合わせた接客ノウハウは各店舗に蓄積されていますが、店舗ごとに情報が分断されている点が大きな課題でした。この“アナログの知”を可視化し、ECやソーシャル上で個別のお客さまに最適な情報発信やコミュニケーションを実現すべく、ソーシャルコマースの変革を図りました」と説明しました。

こうしたクライアントの課題に対し、電通グループは「内製と自走」をテーマに、ソーシャルコマースの刷新を支援しています。具体的には、ダッシュボードを新たに導入し、ソーシャル施策における全体の販売状況や店舗ごとの販売状況を可視化。「リアルタイムで全体/各店舗の課題を洗い出し、迅速かつ適切な意思決定を行っていただくサポートをしています」と三橋氏は言います。植田氏も、「流入数や購買数がリアルタイムで可視化できるので、SNS運用をされている方の日々のモチベーションにもつながりますよね」、とダッシュボード導入のメリットを語りました。

ダッシュボードを軸に、ターゲットのニーズやペルソナを正確に把握し、個別のコミュニケーションを強化した結果、大黒屋のライブコマース機能「LIVE SHOPPING」自体の売り上げ拡大はもちろんのこと、売り上げ維持や在庫回転率の向上にもつながっています。また、クリエイティブや撮影に関するマニュアル・トンマナも作成し、社内でマーケティングを自走するためのサポートも実施しています。「この基盤をベースに、ライブコマースが浸透している中国向けの販売強化や、大黒屋の強みである鑑定力のデジタル化をさらに推進していきたいです」と、小川氏は今後の展望を語りました。

植田氏は今回のプロジェクトを振り返り、「これまで店舗で実施してきたOne to Oneのコミュニケーションをソーシャル上でも実現することで、購買に直結する点に、ソーシャルコマースの大きな可能性を感じました」とコメント。三橋氏は、「ソーシャルコマースを強化することで売り場が拡張されるだけでなく、そこで得られたお客さまの声やデータをもとに、さらなる売り上げにつなげるという仕組みを作れたことが、今回の大きな成果だったと思います」と述べました。

まとめ

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新しいテクノロジーを活用した、次世代CXの最適解とは?

小川麟太郎氏、川村健一氏、泰良文彦氏

次のセッションでは、パネリストとして電通デジタルの小川麟太郎氏、川村健一氏、モデレーターとして電通デジタルの泰良文彦氏が登壇。「“次世代サービスの創り方”〜アドバンステック×クリエーティブで次世代のCXを目指す〜」というテーマのもと、アドバンステック(VR、ARなどの新しいテクノロジー)を活用したプロダクト・サービス開発におけるCXデザインのポイントについて語り合いました。

冒頭、泰良氏は、クライアントからよく相談されるというケースを下記のとおり紹介しました。

  • CX向上のためにVUI(音声ユーザーインターフェース)、VR、ARなど新しいテクノロジーを活用してみたいが、その効果が疑問。
  • アドバンステックを生かしたサービスやプロダクトを作ったことがないので、どう進めればいいか分からない。
  • そのうち新しいテクノロジーにトライしてみたいが、もっと先でいいと思っている。

小川氏、川村氏による“世の中にあるアドバンステックのCX好事例”をひもとくと、以下のポイントが見えてきたといいます。

CX好事例

では、電通では具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。一例として、小川氏はNTTドコモの「my daiz(マイデイズ)」を紹介しました。「my daiz」はユーザーが求めているコンテンツを顧客へ提供するためのプラットフォームで、Siriのような音声アシストのほか、テキストチャットやタッチUIでのコミュニケーション機能も備えています。

マイデイズ

小川氏が主に担当したのは、企業・サービスとお客さまの中間に介在するAIエージェントがどういった存在であるべきか、どう接触するべきか、などを設計するキャラクターパーソナリティデザイン。「VUI(音声ユーザーインターフェース)による音声対話が可能だったので、それこそSiriやAlexa、Google Homeを調べて使い倒しました」と小川氏は振り返ります。

また、キャラクターデザインの設計プロセスについても言及。「四角い豆腐みたいなキャラクターにしたのは、日本というマーケットの特性として、人ではない何かに、独り言のように話しかけることが定着しない傾向があることが分かったからです」と話し、「これはユーザーテストを経て分かったことですが、はっきりとした実体を持つ相手さえいれば、日本人は一気に話しかけてくれるようになるのです」と解説しました。

その実体を明らかにするために取り入れたのが、「デザインスプリント」という手法。少人数かつ短期間でアイデアの発散と試作、検証を繰り返すアジャイル型のプロセスを行ったといいます。

もう一つ、ポイントとして挙げたのが、音声だけでなくテキストチャットなどさまざまなコミュニケーションの機能を実装したこと。「音声対話だと、ユーザーの問いかけに対して“よく分かりません”と返されてしまうこともあります。そこで、複数の操作方法を用意してユーザー自身が選択できるようにし、それぞれに正しいシナリオを用意することで、ストレスなく心地よい体験を目指しました」と小川氏。

続いて、アドバンステックを活用する上での課題とポイントについて、川村氏が解説しました。

アドバンステックの課題とポイントアドバンステックのワークフロー

「CM、グラフィック、ウェブ、アプリなど、完成形がイメージしやすいものは、企画・プロトタイプ→開発→ローンチ・改修と進んでいくウォーターフォール型のワークフローが一般的です。一方、アドバンステックを活用するプロジェクトの場合、アジャイル型のワークフローが有効です。なぜなら、企画時点ではゴールが不明確なため、プロトタイピングによって体験の模索、関係者のイメージ共有、フィジビリティ担保などをアジャイル型で進めていく必要があるからです。アドバンステックを単にツールの導入として捉え、従来のウォーターフォール型フローで進めた結果、イメージしたことと実現できることに差が生じ、実現不可能な企画となってしまうケースが多くみられます。アドバンステックに取り組む上では、ワークフロー自体から見直す必要があると考えています」(川村氏)

最後に本テーマのまとめとして、泰良氏が以下のようなポイントを挙げました。

  • アドバンステックを積極的に取り入れていくことで、今まで実現できなかったレベルのCXを実現できる可能性がある。
  • 新技術は期待するパフォーマンスが出ないこともあるのでアジャイル型で開発していくことが重要。
  • できるだけ技術を感じさせないアンビエントな体験、ソーシャルグッドにつながる体験を目指す。
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