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日本発!小さくても逆境に勝つ「小さな大企業」スモール・ジャイアンツNo.6

「新・中小企業」論 〜5回の開催で目撃した日本の希望〜

2022/03/02

全国各地の未来ある中小企業を発掘すべく、Forbes JAPANと電通が立ち上げたプロジェクト、その名も「スモール・ジャイアンツアワード」。5年目という一つの節目の審査を終えた、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春氏による寄稿をお届けします。


従来のカテゴリーでは説明ができない新たな企業群が日本には確実に存在する。
それらに重なるのは、ユニクロ・柳井正氏、ヤマト運輸・小倉昌男氏ら偉大な経営者たちの姿だ。

組織の規模感を超越した価値を創出する「新・中小企業」

 

「新・中小企業」というカテゴリーを世に提唱すべきではないか。なぜなら、大企業や中小企業という組織の規模感・サイズを超越した企業があるからだ。同業他社とは明確に一線を画すインパクト──新たな市場を創造し、後続する参入者を生み出す企業こそ、私たちがスモール・ジャイアンツと呼ぶ新・中小企業だ。

日本はそんな企業を生んできた歴史がある。1963年のベストセラー『危ない会社』という神戸大学の占部都美教授の本で名指しされたのが、現在のヤマト運輸である。すでに上場していたが、経営は厳しく、同業他社に差をつけられていた。1971年に社長に就任した小倉昌男氏が目を付けたのが、子どもに荷物を送りたい親心だ。これは常識外れの発想だった。宅配は郵便局という官の独占事業であり、民間の運送業者はメーカーなど大口の荷主しか相手にしない。一般家庭の荷物は売上が立たないからだ。しかし、規定が細かい郵便小包を不便と感じた小倉氏は、航空業界のハブ&スポークをヒントに集配システムを構築。その後、多くの同業者が参入する宅配市場を生みだした。

何も新商品や新サービスだけではなく、「伝える」ことで市場を創出したケースもある。

ハイエンドのキャンプ用品を製造するスノーピークの山井太氏は、1996年をピークにオートキャンプ人口が急減する中、顧客と焚き火を囲むイベントで対話を行うと、高い価格の意味、製品に込められた意図など「価値が伝わっていない」と痛感した。顧客と価値を共有するため、山井氏は問屋の反発を押し切り、流通改革を断行。小売りとの直接取引を始めた。まだカスタマー・エンゲージメントという言葉がない時代に「人間性の回復」をミッションに掲げてアウトドアブランドを確立。キャンプ先進地の欧米にも乗り込むと、アメリカ人が「スノーピークはラグジュアリー・キャンピングだ」と新しい言葉を使い出すまでになったのだ。

観光のあり方を変えた星野リゾートの星野佳路氏も、「価値共有」型だろう。「エコツーリズム」という言葉はいまや珍しくないが、彼がその先駆者である。当初はニッチ狙いだった「リゾートリピートモデル」もいまでは一つの市場だ。

そして、山口県の洋品店を垂直統合によるSPAでファストファッションという業態にしたファーストリテイリングの柳井正氏。世界規模になったユニクロについてはもはや説明は不要だろう。

どのビジネスも元の商売を強みに変えて、地続きの拡張を試み、市場を創出した。苦渋の決断で切り捨てなければならないことも多く、その実行力がある企業こそ「新・中小企業」と言えるだろう。

ニッチは巨大市場に化ける

その好機がいまだ。2020年にスモール・ジャイアンツアワードのグランプリを受賞した、川口スチール工業(佐賀県)を取り巻く世界は2年間で激変した。同社は、工場など産業施設の屋根を設計・施工する従業員12人の小さな会社である。「脱下請け」を目指して太陽光パネルの超薄型シート「フィルム型ソーラー」を開発。2010年にどこにでも設置可能な発電システムを完成させたが、国内で市場を確立できなかった。その後、アフリカの非電化地域に焦点を移して、「暗闇に光をもたらした」と、アフリカ諸国で注目されていた。すると、世界のお金がサステナビリティ領域に動き始めたのだ。

まず、国連開発計画(UNDP)のニューヨーク本部から提携の話が舞い込み、昨年末、ウガンダとブルキナファソのUNDPと、同社代表の川口信弘氏がつくった一般社団法人GOOD ON ROOFSの業務提携が決定した。日本で川口氏たちが企業の屋根に賃料を払ってパネルを設置。太陽光発電の収益の一部をアフリカでの電化事業に使用する。屋根を貸した企業は「UNDPと共同の社会貢献活動」をPRできる。UNDP側も企業に対して、積極的に発信して欲しいと思っている。

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また、国際協力銀行(JBIC)は「地球環境保全プロジェクト(通称:グリーン)」という支援策をスタート。昨年3月に3,000万ユーロ(約39億円)をベナン共和国に融資することが決定。「グリーン」融資が学校の電化事業に限定使用される。ベナンで川口氏が太陽光発電の活動を続けながら雇用を生み、技術教育を行ってきた地道な取り組みにJBICが賛同。グリーンを通じて川口氏たちが一手に事業を引き受けることになったのである。

もともと屋根などの太陽光電の設置場所を貸すPPA(第三者所有モデル)という市場は存在した。そこに途上国支援とSDGs文脈が加わり、地球上に13億人がいる非電化地域の巨大な「PPA電化市場」を創出したのだ。

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2018年にグランプリを受賞したミツフジ(京都)も、市場があとから生まれたケースだ。衰退していた繊維業の歴史が生みだした独自の繊維と技術を使い、同社は生体データを正確に取得するIoTウェアラブルの「hamon」というシャツを開発。建設現場での熱中症対策や米プロスポーツの分野などで、体内の変調を知らせる役割で使用されていた。

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「もっと日常的に使用できないか、多種多様な労働環境に適した使用法がないかと研究してきました」(三寺歩社長)

2022年1月、マルチキャリア対応のSIMを搭載したスマートウォッチ型のウェアラブルを発表。クラボウと提携し、工場作業者の暑熱リスクと体調管理ができるシステムに連動する。作業者が自分の体の状態を知るだけでなく、管理者による全作業員の集中管理機能を可能にした。

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「コロナ禍で健康に対する考え方が一変した」と三寺氏は言う。個人の健康データを監視されることに抵抗があった人たちが、「見守られたい」と意識を180度変えたのだ。高齢化が進む建設業や製造業の現場で必需品となるだけでなく、自治体や病院は予防医学の見地から「見守り」の必要性を求めてきた。さらにウェルビーイングという言葉が市民権を得て、大企業側から「働き方」や「健康」での連携を求められるようになったのだ。

ニッチと思われていた中小企業の試みに、世間が思わぬ反応を示して市場が大きくなる。経営者がとった行動が、ドミノ倒しのように人々の問題意識を変えていく。それが「新・中小企業」による市場の生みだし方ではないだろうか。

行動を続ける者こそ、世界の景色を変える主役になるのだ。

藤吉雅春=文


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 Forbes JAPAN 2月25日発売号は「日本経済の主役は新・中小企業」スモール・ジャイアンツ特集!大企業でもなく、中小企業でもなく、新たな市場を創造する「新・中小企業」を集めました。
https://forbesjapan.com/magazines/detail/133

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