DENTSU DESIRE DESIGNが考える、「欲望理論」からのマーケティング再構築No.11
「欲望未来指数」で、消費者が持つ半歩先の欲望を予測する
2023/04/26
「DENTSU DESIRE DESIGN(電通デザイアデザイン:以下DDD)」は、企業から見えにくくなってきた現代の消費者像を、今一度「欲望(Desire)」を起点とした消費意識からひもとこうとするプロジェクトです。
本連載では、DDDメンバーが、「欲望」を起点とした消費者インサイトへのアプローチ方法と今後の展開について紹介していきます。
DDDが活動の中で見出した、「11の欲望」。過去の記事では、それぞれの欲望をどの程度持っているかを基準に、クラスター分類(タイプ分け)ができることをご紹介しましたが、この「11の欲望」はそれぞれが同じ大きさで存在するわけではありません。
今回は、これまで紹介してきた今の時代の消費者が持つ「11の欲望」を数値化し、半歩先の消費者の欲望を可視化するために開発した「欲望未来指数」について紹介します。
「買いたい・欲しい・やりたい・見たい」意向と、欲望の増減を可視化する
近年、顕在化した消費者のニーズを捉える「データマーケティング」が多くの企業で活用されている一方で、国際情勢や物価上昇、急激なデジタル化に伴う生活や社会環境の変化などにより、消費のニーズや景気動向を予測することは非常に困難になっています。
景気動向指数(※1)、消費者物価指数(※2)など、“今”の消費者のお財布事情や、彼らが感じている景気観を測る指標はいくつか思い当たるものがありますが、われわれは“少し先の未来”における消費者の意欲や欲望を予測する指標をつくることを目指して、「欲望未来指数」を開発しました。
※1 = 景気動向指数
生産や雇用など、さまざまな経済活動における重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、景気の現状把握と将来予測に資するために作成された指標のこと。詳しくはこちら。
※2 = 消費者物価指数
全国の世帯の家計に係る財およびサービスの価格等を総合した、物価の変動を時系列的に測定。その上で家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示したもの。詳しくはこちら。
消費者が現在持っている「11の欲望」と、今後の消費に対する意向を掛け合わせることで、顕在化しているニーズだけでなく、その奥にある人々の潜在的な消費意欲まで可視化できるとわれわれは考えました。
そこで、DDDの基幹調査である「心が動く消費調査」(調査概要はこちら)をもとに、独自に規定した現代の消費者が持つ43種の欲求項目から構成される「11の欲望」が直近の消費によって満たされたと答えた人の割合(総和)と、近い将来の消費意欲(何かを「買いたい」「欲しい」「やりたい」「見たい」意向)が一定以上ある人の割合を掛け合わせて、「欲望未来指数」を算出しました。
下図の「欲望未来指数」は、2022年11月の調査結果を基に、11の欲望を持つ人の数値が近い将来に、どのくらいの高さになるかを表したものです。
欲望未来指数からみる、11の欲望の推移
「心が動く消費」調査を開始した2021年5月から2022年11月までの調査結果を基に算出した「欲望未来指数」の推移を見ると、4つの欲望が、右肩上がりに伸びを見せています。その内容や寄与したと思われる影響などについて、一つずつ見ていきましょう。
1.「無理のない自由への欲望」
自由といえば、昔は戦って勝ち取るものでしたが、今の世の中の自由は、手が届く範囲で、キープできるものとして求められる傾向があります。自分のままで異世界に行き、無理をせずとも無双できるような“転生”や“異世界”をテーマにした漫画や、仕事をしながら趣味を楽しむワーケーションなど、昨今のはやりでもその傾向が見られます。
2.「心身平常運転の欲望」
新型コロナウイルスの感染拡大以降、心身が平常であることへの欲望は高まり続けています。睡眠ケアの飲料やグッズがヒットしたのも、ストレスの多い日常において、睡眠時間や睡眠自体の質を高めることで「心身ともに問題がない状態」でいることが多くの人が望むものとしてとらえられているからだと言えます。
3.「マイワールドを追求したい欲望」
第8回の記事でも紹介しましたが、日常にひとりの時間や空間を作って、好きなことに没頭するなど、自分と向き合うことでリセットとリラックスを求める「居独(きょどく)」と呼ばれる行動トレンドが広がっています。オンライン学習やパーソナル〇〇など、自分の世界を追求する時間を大切にする欲望は確実に高まっています。
4.「資本集中型浪費欲望」
円安や物価上昇など、消費にブレーキをかけそうな外部要因も多くある中、これと決めた世界だけは一気に財布のひもを緩めて自己実現したい、という欲望も高まりを見せています。「マイワールドを追求したい欲望」ともつながりますが、自分の中で大きなメリハリをつける意識は消費者の中で定着してきていると考えられます。
また、右肩上がりではありませんが、「他人という鏡に映した欲望」は直近半年でグッと伸びました。新型コロナウイルス感染拡大防止のための規制もなくなり、外出意欲の高まりとともに、自分の努力や頑張りを、誰かに知ってもらいたい、反応してもらいたいという欲望が高まり始めた表れと考えられ、今後の推移にも注目です。
この5月に6回目の「心が動く消費」調査を実施予定です。現代の消費者がもつ欲望について、引き続き紹介したいと思います。
これからも電通デザイアデザインプロジェクトではさまざまなマーケティング課題に向き合っていきます。ご興味のある方は下記までお問い合わせください。