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OODA式すごい組織づくりNo.4

花人・赤井勝に学ぶ、しなやかな判断と意思決定のコツ。

2023/12/19

OODA

変化の激しい現代のビジネス課題を解決に導く意思決定モデルとして、注目を集めている「OODA」(ウーダ)。

本連載では、さまざまな業界の“OODA実践者”との対話を通して、OODAの魅力とこれからの時代に必要なリーダーシップを身に付けるためのヒントを発信します。

今回は花人(かじん)の赤井勝氏をゲストに迎え、「OODA式リーダーシップ 世界が認めた最強ドクトリン」(秀和システム)を上梓した、電通の事業開発プロデューサー、アーロン・ズー氏と対談。

花を飾る「装花」という仕事で世界的に活躍する赤井氏へのインタビューを通じて、ビジネスパーソンのヒントになる仕事の流儀とクリエイティビティを、2回にわたってお届けします。

【OODAとは】
OODAループ
元アメリカ空軍大佐で戦闘機のパイロットだったジョン・ボイド氏が提唱した、意思決定や行動を起こすためのプロセス。観察(Observe)、判断(Orient)、決定(Decide)、行動(Act)の頭文字を取った言葉で、変化し続ける予測不能な状況に対して、常に最善手を打っていくことを目的とする。欧米の経営やマーケティングでは従来のPDCAだけでなく、OODAが必要不可欠な意思決定プロセスとして認知されている。(詳しくはこちら)。
 



「装花」には毎日発見がある。変化と向き合い続ける仕事

アーロン:赤井先生は花を飾ることを「装花」と呼んでいます。華道やフラワーデザインでもない、装花とはどのようなお仕事なのか、なぜ装花とネーミングしたのかを教えていただけますか?

赤井:僕は花屋の息子で、物心がついたころからいつも花と触れ合っていました。落ちた花びらを遊び道具にしながら、子ども心に「いろんな匂いや色があるんだな」「同じ花でも枝と花びらで匂いが違うな」と感じながら過ごしていたんです。

そして花屋で働く母の姿を観察したり手伝ったりしているうちに、花はお客様が来るときやイベントがあるときなど、「誰かを迎え入れるとき」に装われることが多いなと気づきました。その人やその場所のことを思い、おもてなしするために装う。そこから「装花」という言葉が生まれました。僕にとって花とは「装う」ものなんです。

赤井勝

アーロン:花を装うから、装花。とても分かりやすく、それでいて新鮮な印象も受ける秀逸なネーミングですよね。また、赤井先生はご自身のことを「花人」と呼んでいます。それこそ、フラワーアーティストや華道家といった言葉がすでに世の中に浸透している中で、なぜ花人とネーミングしたのでしょうか?

赤井:たとえば華道は、一つのスタイルや様式を極めるものです。それはそれで素晴らしいことですけど、僕の場合は花の道を極めるのは無理だと思っているんです。なぜなら、装花をしていると毎日発見があるし、クライアントや花と向き合う中で変化することもたくさんあるからです。明日、北海道から花が届くんですけど、今からドキドキしているんです(笑)。「僕がイメージしている淡いピンクと、生産者さんがイメージしてくれた淡いピンクが一致するかな」とか、「北海道と東京では冷え方が違うから、成長が進みすぎていないかな」とか。

アーロン:確かに、同じピンクでも人によって見え方が同じかどうかは分からないと言われていますよね。

赤井:そうなんです。毎回が一度きりの勝負で、うまくいくこともあれば「もっとこうすればよかった」と思うこともある。だからやめられないんですけどね。

僕は何か一つの道やスタイルを決めているのではなく、花やクライアント、その場所やモノと向き合い、どう装うのかをその都度判断するんです。たとえば、イベントでお客さんが入ってきた時に「わあっ」と驚いてもらうのか。粛々とイベントが終わって家に帰ってから「そういえば、紅葉が飾られていたけど、冬に紅葉ってないよね」と気づいてもらうのか。どのような感動を与えるのかという部分を僕は引き受けていると思っているので、花を通じて心を伝えていく人という意味で自らを「花人」と呼んでいるんです。

アーロン:今のお話は、まさしくOODA的な思考に通じるものがあります。OODAは計画的に決めたことをやるのではなく、その場の状況を観察した上で「その瞬間、どう動くのが最善か」を優先する意思決定プロセスです。仕入れた花がどのような状態なのか、フタを開けるまでどうなるか分からない。まさに予測不能な状況に対して、瞬時に判断して意思決定しながら作品を作り上げていく。装花とはそういうお仕事なんですね。

赤井:もちろん、自分の中でこういうふうに飾ろうというイメージはあるんです。でも、実際に現場で花と向き合ったり、クライアントと会話をしたりする中で、もっと良いやり方があればその場で変えますよ。やっぱりクライアントやそのお客さんに喜んでもらうことが一番ですから。

アーロン:そもそも、この世界に入ったきっかけは、やはり幼少期の経験から?

赤井:はい、母親の影響ですね。母は「お花の仕事はいい仕事やで。お花屋さんは最高の仕事なんや」と言い続けてきました。なぜなら、花を配達に行くと、お金をもらって花を届けているのに、必ず感謝されるから。お祝いごとや楽しいイベントのときはもちろん、悲しいことがあったときでも、花を届けると「ありがとう」と感謝してもらえる。そんな仕事はほかにないんだ、と。小さいころからずっとその話を聞き続けてきましたから、この道に進むのは僕にとって自然なことでした。

花のセオリーを理解した上で、より良い方法を模索する

アーロン:世界的な知名度がある華道ではなく、花人という独自のスタイルを築き上げるのは大変でしたか?

アーロン・ズー

赤井:華道は一つのスタイルを継承していくものだと思いますが、僕は一つのスタイルに決めつけないことを大切にしているので、スタイルがないがゆえの楽しさと大変さがあります。僕も子どものころに華道を習っていたのですが、昔は花を飾るところといえば床の間で、平面180度ぐらいの領域が華道のイメージなんです。

でも、今は床の間がある家も減ってきて、和室にテーブルや椅子を置くようになると目線も変わってくる。生活様式が変わる中で、空間全体の雰囲気や見え方も変わっていますよね。そうなると、もはや平面ではなく360度の立方体で考えなければなりません。実際にイベントでも上から花をつるして下から見上げたり、寝転んで見たりすることもあります。

そのような新しい見せ方は、決まったスタイルがない僕らだからこそやりやすい部分はあると思います。その代わり、どのようなやり方であっても人の心を動かし、成功させないといけない。ですからやり続けて、学び続けるしかないんです。でも華道は華道で、一つのスタイルを守り続けなければならない大変さがあると思いますよ。

アーロン:そのお話は、新規事業と既存事業の特徴に似ていますね。新規事業はある種のセオリーを崩してでもやり続けて成果を出すことが求められます。一方、既存事業はこれまでに培ってきたネットワークやプロセスを守り、セオリーを崩さないことが大切です。

赤井:花を飾る仕事も事業を作る仕事も、組み合わせが大事だと思うんです。花は花材をどのように組み合わせるのかを考えるんです。その時に、たとえば「秋の野山を表現するならススキや立ち枯れしているアジサイを合わせる」みたいなセオリーがあります。僕らもそれは理解した上で、他にもっといい組み合わせがないかと模索する。

特に今は品種改良が進んでいるので、選択肢は無数にあります。元素記号は菊なのに、パッと見ると菊に見えない。でも、よくよく観察すると菊の特徴を持っている。そんな花がたくさんあるんです。だから、最初に見たときはユニークで斬新な印象を受ける。そこからじっくり見てみると、根っこのところのセオリーはきちんと押さえている、そんな装い方もできるんですよね。

Akai Masaru
©️Akai Masaru

アーロン:セオリーを知っているからこそ、セオリー崩しができるんですね。

赤井:それは見る人にとってのセオリーも同じです。たとえば、皆さんは花びらが散ったらその花は終わりだと考えるかもしれません。でも、散った花の中には萼(がく)もあるし、花弁もあるし、花粉もある。それが水面に広がる姿もすごくきれいなんです。

赤井勝

アーロン:そうなんですね。枯れていく花がドライフラワーみたいで美しいと思ったことはあるのですが、水に浮かべてみたことはありませんでした。

赤井:僕も若いころは花が咲き誇る姿こそがきれいだと思っていましたよ。でも年を重ねるにつれて、1回ピークに到達した花の達成感というか、やり切ってちょっとしおれているくらいの花に心が動かされるようになるんです。だから、花が散る様子までを表現に取り入れて、ハッと気づいてもらうような仕掛けを作ることもあります。

(後編に続く)

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