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人に寄り添える「People Driven Marketing」のすすめNo.7

「やりっぱなしマーケティング」はもう終わり!七つのWATCHポイントを駆使したPDCAとは?

2018/09/14

PDM STORY A子さん
スポーツ用品店勤務・A子さんのお悩みとは?(イラスト:金井沙樹)

ピープル・ドリブン・マーケティング(PDM)の考え方を紹介する本連載。最終回のテーマは「Execution & PDCA」です。

重要なのは「中期PDCA」と「短期PDCA」を組み合わせることと、その中にある「七つのWATCHポイント」です。

PDMロゴ


<目次>
~A子さんの物語:Execution & PDCA編~
「やりっぱなしにしない」次につなげるための七つのWATCHポイント
「きちんとPDCAを回せる」Execution設計にしておくこと
最後はObjectに立ち戻る

~A子さんの物語・Execution & PDCA編~

大型スポーツ用品店「スポーツピープル」に勤務するA子さんは、デジタルを活用し、ピープルドリブンな(=人を基点に人を動かす)マーケティングに取り組んできました。

①社員が共有すべき目標数値と現在の課題を「人基点」で見直す。(Objective)
②③お客さまがどんな人たちで、どれぐらいの購買ポテンシャルがあるのかを推定する。(Deep Dive、Person)
④その人たちの日常生活のどこにロイヤル顧客化へのチャンスポイントがあるのか分析する。(Journey)
⑤分析から導かれた潜在顧客とそのチャンスポイントに対して、いつどんなメディアを使ってメッセージを届ければよいかを考える。 (Media&Promotion Design)
⑥そしてどのようなメッセージを届ければどんな効果を得られるのかを分析する。(Creative & Activation)

ここまでの「打ち手」に手応えを感じているA子さんですが、心配なのは今後のPDCAサイクルをうまく回せるかということです。

「正しいやり方でデータや各施策の評価をしないと、なんとなく満足しただけで終わってしまうよね…」

A子さんはこれまでの取り組みを“評価”し始めました―。

「やりっぱなしにしない」次につなげるための七つのWATCHポイント

電通デジタルの松野です。今回はさまざまな業種におけるデジタル広告のコンサルティングやプロジェクトマネジメント業務に従事してきた私が、PDMにおける「施策の実行アプローチ」と「PDCA手法」を解説します。

大規模にマス広告を展開すれば売れた時代とは異なり、モノやサービスを売れ続けさせるためには、各種施策を複合的かつ有機的に結び付けることが必須になりました。

それらの施策アプローチがどう効いたかについては、さまざまなデジタルデータや調査手法があり、その気になればそのほとんどが“見える化”できるといっても過言ではありません。

  • 「何人」狙うべき人を動かせたのか?
  • 「なぜ」動いたのか?
  • 「どのデータを使ってどのようにチェック」したからそれがわかったのか?
  • 次に解決すべき「課題」は何なのか?

PDMではこのようなチェックポイントを、中期PDCAと短期PDCAの中で「七つのWATCHポイント」としてまとめています。(図1)

図1:PDMにおける七つのWATCHポイント
図1:PDMにおける七つのWATCHポイント
図1:PDMにおける七つのWATCHポイント

■中期PDCA(四半期~半期)で見るべきWATCHポイント1~3

Objectiveで設定したKGI/KPIが各種「打ち手」によってどう変化したか、達成できたかを、意識データや行動データを活用しながら定期的に評価していきます。

「中期」PDCAは、一般的には四半期(3カ月)~半期(6カ月)の期間で行っていくのがよいでしょう。

【WATCHポイント1】
想定した各ファネルの各段階におけるKPIの達成度を評価。進みが悪い箇所=改善箇所を明確化します。

【WATCHポイント2】
さらに細かくドリルダウンし、どのターゲットやクリエーティブが特に大きくKPIに影響したのか(良い面でも悪い面でも)をチェックします。

【WATCHポイント3】
実際に動いた“人”が、どのようなコンタクトポイントにどの順番で接したのか、当初想定したカスタマージャーニーとの差分を比較します。

■短期PDCA(日次~月次)で見るべきWATCHポイント4~6

デジタル上で計測可能な指標については、より短期のPDCAも可能です。

こちらは「週次」や「月次」のタイミングで常に評価と改善のサイクルを行っていきます。また、例えばデジタル広告で予算を集中的に投下する場合などは、「日次」でも改善を行います。

【WATCHポイント4】
潜在需要のありそうな“人”を狙うデジタル施策(動画広告やリーチ目的のデジタル広告)では、行動指標と心理指標のいずれか、もしくは組み合わせで適切なKPIを設定。潜在層へのブランディングを行うためのPDCAを回します。

【WATCHポイント5】
需要が顕在化している“人”を狙っていくデジタル施策(リスティング広告やターゲティングディスプレー広告)では、KPIとして「コンバージョン地点」を適切に設定。高速PDCA運用で効果を最大化します。

【WATCHポイント6】
アクセス解析ツールなどで、ページごとのPVやヒートマップのデータから、オウンドメディア(自社サイト)に流入してきた“人”の動きを分析します。

「流入元(どこから?)」「属性(どんな人が?)」「回遊状況(どんなコンテンツを?)」「意識(どんな気持ちになって?)」「行動(何件アクションした?)」

などが分析できます。そのデータを基点に、ウェブサイト上で思い通りに機能していない箇所、つまりボトルネックを洗い出し、ウェブサイトやランディングページ改善の方向性を明らかにしていきます。

■総括的なWATCHポイント7

中期~短期も踏まえた総括的なPDCAを回します。

【WATCHポイント7】
曜日要因など外的要因も加味しながら、費用対効果(ROI)を最大化するために、マーケティング施策間の予算配分を最適化します。

中期と短期のPDCAを合わせて回していくことで、より「施策の効果」と「次の課題」が明確化されます。そうすると「なんとなく全体の広告効果が上がったからよかったね」でマーケティング&プロモーションを終わりにしないサイクル、言い換えれば「やりっぱなしにしない」サイクルができます。結果として、よりROIの高い施策に注力できるようになるのです。

「きちんとPDCAを回せる」Execution設計にしておく

施策自体も、最初からPDCAを回しやすい形を意識して設計・実施しましょう(Execution)。

例えば、これまで「チラシ」に割いていた予算の一部を、デジタル広告に接触させる施策に寄せる方針を検討したとします。この“チラシのデジタル化”施策で決めねばならない要素は多岐にわたります。

【Execution:実行段階では?】
「どのプラットフォームが持っているターゲット情報を使って配信する?」
「どの地域にセグメントを区切って配信する?」

【PDCA:効果検証では?】
「アンケートで効果を測る?それとも位置情報を活用した行動データ計測ソリューションを導入して効果を測る?」
「どれぐらいのスパンで効果を見ていく?」

デジタル広告施策は、配信対象を絞り過ぎても広げ過ぎても、当初想定した“人”が意味ある形で動いたかどうかが分かりにくくなります。このあたりの設計はプランナーの腕が問われます。

なお、もし配信設計や実行がうまくいかなくても、その施策が「失敗」になってしまうわけではありません。実績データがオフライン~オンライン含めて計測できる時代なので、想定した効果が得られなくても、そのデータをひとつの知見ノウハウとすることができます。

想定した効果が得られなかった場合に見直すべき要素を整理しておきましょう。

  • ターゲット(Who)
  • クリエーティブ(What)
  • 予算投下時期(When)
  • コンタクトポイントの相乗効果(Where)
  • 出稿量(How)

まとめると、たとえそれがキャンペーン的な広告出稿でも、中長期的に腰を据えてデータを蓄積し、“Always On”でPDCAに取り組むこと。そして「どの粒度で」「どの期間で」「どの目標数値を追いかけて」施策を継続して行っていくかを見据えながら、設計や実行の作業を進めることが重要です。


最後はObjectiveに立ち戻る

A子さんは、設定したKPIがさまざまな「打ち手」によってどう変化したかを定量的に評価するため、広告接触者へのアンケート調査や、位置情報を使った来店計測ソリューションを活用。売上データとひも付けたオフライン施策とオンライン施策の相関性の分析も行いました。

施策評価の結果、以下のような成果と課題が判明しました。

・狙ったターゲットに対して「スポーツピープル」の認知を拡大させることや店に来てもらう人数を増やすことができた

・しかし、来店後に実際に商品を購入してもらうところまでの転換率が大きく伸びていない

これまでの打ち手によって、最初にObjectiveで設定したマーケティングファネルの構図が変わってきているかどうかを定量的に知ることができたA子さん。これからも実効力のあるPDCAを回すことで、スポーツピープルを成長させていくことができそうですね。


―上記の解決編で、察しのよい方はお気付きいただけたでしょう。それは、PDMには「Execution & PDCA」の次のステップがあるということです。

そのステップとは、第2回で取り上げたObjectiveです。つまり、Objectiveで設定したマーケティングファネルの数字が動いたかどうかをチェックし、次の“打ち手”を考えるところまでが、「PDMにおける中長期のPDCA」になります。

A子さん

事業の持続的な成長のためには、PDMに終わりはありません。PDMの七つのフェーズを一連の流れとして行い、それらを元に“人を見る”ことによってのみ、持続的な事業の成長が実現できることでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。