AIによる自動生成ツールでCXを向上!「CXAI」とは?No.1
電通がいよいよ「クリエイティブAI」を解き放つ!自動生成AIソリューション「CXAI」
2021/05/18
電通グループ4社共同で、クリエイティブ自動生成AIソリューション「CXAI」(シーエックス・エーアイ)をリリースしました。
このソリューションに込められた想い、背景を、電通AIプロジェクト「AI MIRAI」を統括する児玉拓也がご紹介します。
<目次>
▼2017年、「AIコピーライター」から始まった電通とAIの歩み
▼複雑化する「CX」と、進む「AIとの協調」
▼CXデザインの“高度化”と“インハウス化”の両立を実現する「CXAI」
▼電通は自ら仕事を奪うのか?というジレンマ
▼「CXAI」トライアルパートナー、募集中です
2017年、「AIコピーライター」から始まった電通とAIの歩み
AIコピーライター「AICO」(アイコ)の記事が最初にウェブ電通報に掲載されたのは、2017年5月のことでした。
当時は“第三次AIブーム”の真っただ中、AIがキャッチコピーを書いた!というだけで目新しく、さまざまなところで話題になりました。
あれから4年。その間、電通グループはAI MIRAIというグループ横断プロジェクトを結成し、たくさんのAIソリューションを開発してきました。
キャッチコピーだけではなく、バナー広告生成、文章生成、会話(チャットボット)、予測エンジン……。
「人間とAIの協創」をキーワードに、AIをツールとして使いこなした、新しいクリエイティビティーの在り方を探っています。
そして今、ついに私たちはAIを、電通の「外」に解き放ちます。それがこの「CXAI」です。
複雑化する「CX」と、進む「AIとの協調」
「CXAI」の説明をする前に、少しだけ背景のお話を。
デジタルデバイスとデジタルサービスが生活の隅々まで浸透したことで、企業にとって「CXデザイン」が重要になっています。
ここで言うCX(顧客体験:Customer Experience)とは、顧客がその商品やブランドを知り、興味を持ち、購買し、継続利用していく中での、一連の体験全てを指します。これらの顧客接点全体を設計・最適化していくのが、CXデザインです。
デジタルの浸透で顧客接点が多様化し、データにもとづいて一人一人に合わせたコミュニケーションができるようになりました。しかし裏を返せば「それぞれに合わせたクリエイティブを一つ一つ考える必要が出てきた」とも言えます。
原理的には「一人一人に合わせた最適なクリエイティブ」を「あらゆる顧客接点」で展開することは可能ですが、現実的には細かく設計しようと思えば思うほど、コピーやバナー、動画などのパターン数が膨大になり、費用や工数の問題が生まれます。
単に大量に制作するだけなら「コピー違い」「レイアウト違い」などで、ある程度対応できるかもしれませんが、顧客とブランドのためにクオリティーを維持しようと考えると、悩ましいところでした。
電通グループ各社は、AIを活用してこの課題に取り組んできました。
私たちAI MIRAIの活動の成果でもありますが、最初に紹介したAIコピーライターのAICOをはじめ、バナー広告自動生成ツールの ADVANCED CREATIVE MAKER(アドバンストクリエーティブメーカー)、効果予測ツールのSHAREST(シェアレスト)、MONALISA(モナリザ)、チャットボットツールのKiku-Hana(キクハナ)などを独自に開発。
電通のクリエイティブノウハウを搭載したAIを開発し、実際の業務にも利用することで、「顧客一人一人に最適化したクオリティーの高いクリエイティブを、効率的に制作する」方法を模索してきたのです。
CXデザインの“高度化”と“インハウス化”の両立を実現する「CXAI」
そして、これら電通グループが開発し、社内で鍛えてきたAIたちを、電通グループ外へ解放し、クライアントの制作プロセスのインハウス化(内製化)を推進するソリューションが、「CXAI」です。
「CXAI」とは、電通グループの多彩なAIソリューション(CXAIでは「モジュール」と呼んでいます)を、クライアントの要望に応じて組み合わせ、提供するサービスです。
クライアントそれぞれの課題に沿って、適切なモジュールを選びカスタマイズできるのがポイントで、オリジナルの「クリエイティブ自動生成ツール」を素早く開発・提供可能です。
2021年5月現在、「CXAI」で利用可能なAIモジュールは15種類以上。電通グループ内で実際に使われているものを中心に、例えば以下のようなAIモジュールが利用可能です。
- AIコピーライター「AICO」
- バナー自動生成&効果予測ツール「ADVANCED CREATIVE MAKER」
- 独自開発チャットボットツール「Kiku-Hana」
- 流行予測ツール「TREND SENSOR」
- ソーシャル広告効果予測ツール「MONALISA」
これらを組み合わせることで、例えば以下のような課題に対応したオリジナルツールを開発できます。
こうして開発したクリエイティブ自動生成ツールを、
ウェブアプリ形式で提供します。だれでも手軽にさまざまな制作物を作れる ようになるのです。そう、この「CXAI」が支援するのは、昨今さまざまな業界でニーズが高まっている「制作プロセスのインハウス化」です。つまり、ある程度定型化されたクリエイティブであれば、「CXAI」を使うことで、自社内で素早くクオリティーの高い制作ができるようになります。
基本は「CXAI」でインハウス化しつつ、AIでは実現できないような高度なクリエイティブは従来通りプロのクリエイターに外注するという形になれば、コスト・スピードいずれも向上し、より豊かな顧客体験を提供できるというわけです。
CX向上のためのAI、だから「CXAI」です。
クリエイティブ自動生成ツールの開発は、従来はAIの開発予算をはじめ、多額の初期投資が必要でした。「CXAI」では、電通グループ各社がすでに業務で使っているAIモジュールを利用するので、開発の手間とコストを下げることができます。もちろん、電通クリエイターのノウハウを取り入れたAIなので、一定のクオリティーも担保されます。
いかがですか?少し気になってきましたか?
電通は自ら仕事を奪うのか?というジレンマ
このサービス、実はローンチに際して非常に悩みました。
というのも、
「AIをクライアントに公開し、インハウス化を進めることで、クリエイターの仕事を自ら奪うのか!?」
という反応が少なからず、あると思ったからです。ここまでの話で実際そのように考えた方、多いのではないでしょうか。この疑問にお答えします。
「CXAI」は、すべての制作作業をAIにやらせよう!というものではありません。今まで通り、「クリエイターが使うAI」の進化は継続していきます。
そして、「クリエイター」の仕事も、減るどころか、よりフィールドを広げていくと考えています。
どういうことでしょうか。図解するとこのようになります。
①人間のクリエイターは、今以上に本質的な課題に取り組むことができる。
制作の実務作業をAIで支援することで、クリエイターは今以上に本質的な課題への取り組み、リサーチの深掘り、骨太な戦略設計に、そのリソースをあてることができます。
②AIと人間の協調を今以上に進めることで、新しい価値の創出ができる。
人間だけでは対応しきれない数の制作や、パーソナライズが可能になると、それに対応した新しいアイデアが生まれます。
人間のクリエイターが大方針のディレクションを行い、実際の制作や運用はAIを使って効率化する。さらに定型化された制作・運用については「CXAI」としてツール化し、内製と外注を織り交ぜて実務を行う。
AIと人間がお互いに磨き合うことで、精緻なマーケティング戦略をスムーズに実行できるようになります。
③今までクリエイターが対応できなかった領域でも、クリエイターのノウハウが活用できるようになる。
②で生み出されたAIをモジュール化し、「CXAI」としてさまざまな企業・さまざまな作業に活用できるように広げていきます。すると、いわゆる「広告」だけではなく、店頭やツール類、広報・PRや社内コミュニケーションなど、AIを通してクリエイターのノウハウをさまざまなフィールドで自由に使えるようになります。
クリエイターは今まで以上に高次のクオリティーの表現、ワクワクする体験を描く。人間とAIが協力して、それを高い精度で実現する。そこから生まれた成果を「CXAI」として“独り立ち”させ、広告やマーケティングにとどまらず活用し、理想のCXを実現する。
それこそが私たち電通グループの目指す「人間とAIの協調」なのです。
「CXAI」トライアルパートナー、募集中です
少し話が大きくなってしまいましたが、いかがでしょうか。
CXAIはまだ始まったばかりのサービスです。私たちが開発したAIモジュールがどの程度実用に耐えるのかは未
知数です。AIの「鍛えなおし」が必要になることも多いでしょう(がんばれ、AICO!)。そこで、CXAIではローンチに際し「トライアルパートナー」を募集しています。使ってみたい!という方がいれば、以下のメールアドレスまで、ぜひお問い合わせください。そしてAI時代の新しいクリエイティブを、一緒に探っていきましょう。
私たちが手塩にかけて育てたAIたちが、皆さまのお役に立ちますように……!
CXAI事務局 Email:aimirai@dentsu.co.jp
イラストレーション:Yuri Fujisaki